第5章 精王と紅(くれない)祖母さん
「俺は絶対行かないからな!」
そう、言い切ってやった。
…が、次の瞬間には精界に連れて来られていた。
「って俺の意見も聞けよ!おばさん!」
「貴方の叔母になった覚えはなくってよ
それより、貴方少しは強くなったのかしら?」
響子は何か含み笑いの様な表情を俺に見せた。
「強くってどう言うことだ?」
「まぁ良いでしょう
お祖母さまがお待ちになってますから、急ぎますわよ」
俺の問いには答えず、先を歩きだした。
「なぁ明日香、祖母さんってこの前テレビで見た最古の桜だろ?」
「はい♪紅お祖母さまですよぉ
会うのは久しぶりなんですぅ」
響子には少し緊張感があるが、明日香はまったくのマイペースだ。
「そんな大層な桜の精が、なんで俺を呼ぶんだ?」
「それはぁ…
…分からないですぅ」
ほんのちょっと考えた様だが、やっぱり明日香には分からなかった。
「はぁ~…」
俺は大きな溜め息をし、肩を落として付いていくしかなかった。
精界の広大な野原をしばらく歩くと屋敷が見えてきた。
近付いて見ると屋敷と言うより、立派な神社の様な建物だ。
中に入ると厳かな雰囲気が充満していて息が詰まりそう。
(俺こういう所、苦手なんだよなぁ)
姥桜を先頭に回廊を奥へ進んでいく。
着いた部屋は百畳はあろうかと思う大広間だった。