第7章 煉獄杏寿郎 □桃ノ花
◆◆◆◆翌日。
「ほ、本当に宜しいのですか?」
俺は、桃花の強請りに答えることにした。宇髄に教えて貰い貢物と身請け金を早々に用意した俺は目を見開いて驚く桃花に忠告をすることにした。
「1つだけ忠告しておこう!!」
この先、共に歩むのなら俺と桃花の道のりは普通とはかけ離れた、荒れくれた道になるだろう。
「幸せにはしてやれない!!」
幸せなど、保証は出来ない。自分の気まぐれに付き合わせるのだ嘘だけはつきたくないと思った。
「それでも良いのなら、着いてこい。」
差し出した俺の手を、桃花が優しく包んだ。
「幸せなど、必要ありませんから。」
笑顔を柔らかいと表現するのは正しいのだろうか。答えは定かでは無いが、この時の桃花の笑顔は柔らかい春先の風のような笑顔だった。
「女に強請られたのは…初めてでな。」
「そういえば花街も初めてだと
おっしゃっておりましたものね。」
鬼殺隊に向かう時代遅れの籠の中で話をした。
「…桃花、お前の名は。なんと言う。」
俺の問いに目を丸くしてから、桃花はまたふわりと笑い風鈴の様な声で優しく答えた。
「姫華、姫華でございます。」
なぜか姫華の瞳に水分が集まっているのを不思議に思いながらも、どうしても不快には思えず俺は頬を伝った透明な雫を指で拭ってやった。