第9章 煉獄杏寿郎 □呼吸 (死ネタ)
「…………フゥーー。」
肺にある酸素をゆっくりと吐き出す。身体にある全ての酸素を外に捨て去るこの瞬間が好きだった。
___「そうだ、全て吐ききれ!!」そういう貴方の傍らで、全ての酸素を吐き出して、空っぽになった身体に、貴方が吸っている酸素を取り入れる。私はそれだけで幸せだったんだ。
「…よしっ!!前へ進めだっ!!」
「…………え?」
一瞬聞こえた声に慌てて振り向くと、そこには見事な夕焼け空が広がっていた。
「師範の…瞳みたい。」
夕空に溶けたその朱色はまるで師範の瞳の様に轟々と燃えていた。
「……そうですね、鬼の…時間ですね。」
この美しい夕焼けが告げるのは鬼の時間始まり。
「…やっぱり厳しいですね、師範は。」
この赤く色付いた日輪刀を力の限り振るう時だ。
「大丈夫、私は前へ…進みますよ。」
貴方の意志を胸に抱いて、今日もまた鬼を狩る。貴方が望んだであろうこの先の未来を勝ち取る為に。
__私はその為に生きて(呼吸して)いるんだ。