第7章 煉獄杏寿郎 □桃ノ花
「情けなかろう、それでもコレが俺だ。」
「情けなくないですよ、何が言いたいんです?」
「………呆れないのか?」
「何でですか、呆れませんよ。」
しかし、柔らかく笑う顔は素直に美しいと思う。
「私を、金魚鉢から出してください。」
この美しい笑顔に『そういえば、仏教で桃は神聖な果実だった。』と、唐突に思い出した。
「桃花(トウカ)、…それは俺にお前を見受けしろと
強請っているのか?お前はココから出たいのか?」
俺の問いにふわりと花が咲くように桃花が笑う。
「女から強請るなんて、呆れましたか?」
この時の桃花の瞳は、深い墨のような黒で随分と強情でやたらと強く見えた。
「そういう女が居ても…うむ。悪くない。」
悪くない。なぜかそう思った。【天下無敵】それが桃の花の花言葉だ。桃花というこの娘、随分と縁起が良さそうだ。『悪くない。』そう思った理由はきっとこれなのだろう。と、俺は桃花の頭をひと撫でして答えは出さずに甘い香りの部屋を後にした。