第6章 不死川実弥 (R18)□笑う月
小さく貴方が歪む度、月に笑われる気がする。
『……壊れそう……だ。』
「…っ……壊すのが…役目…っ…でしょ?」
『……っ…鳴け…よ。』
「…泣いてるのは……っ…そっちだよ?」
草の匂いが鼻に着く。
姫華の香りがそれをどかして
頭もぜんぶ溶かしてしまう。
月は何時でも俺達を見て笑ってる。
『…………っ!!………。』
「………実弥…ねぇ実弥。………好き…。」
例えば月が笑っても貴方がとても臆病で
いつも震えて泣いていても、愛しくて愛しくて
いつも私は冷たい風でも受け入れる。
沢山くれた印も全部毎回毎回飲み込むの。
『………壊すんだ………全部。』
「……………うん。壊そうね、大丈夫だよ。」
俺の月は俺が泣くと酷く綺麗に嘲笑う。
愛の言葉も言えない俺をそばに居るからと
いつでもそっと背を撫でる。
『…俺は………お前が嫌いだから。』
いつとそう言ってから去っていく俺を
お前がどんな顔で見てるのか俺は知らない。
それなのに毎度同じ三日月の日にココに居る。
「…………本当…冷たい風は嫌い。」
臆病な貴方はいつも泣きながら優しく抱いて
拒絶を伝えて去っていく。
それなのに毎度同じ三日月の日にここに来る。
『(本当は愛してるなんて言ったら、
姫華は月より綺麗に笑うんだろォな。)』
けど俺は生憎優しい風など知らないから。
だから、柄でもなく月を数えて会いに来る。
何よりも恐ろしくて愛しい女に会いに来る。
手に入れたら壊すことを辞めてしまいそうなほど
それは優しく笑う愛しい月だから
俺は毎回抱きながら情けなく縋り泣く。
「(本当は知ってるの、優しい事も
怖がりで言えない事も。)」
少し顔をゆがめて苦しそうに泣く貴方が
どうにも愛しくて、私は毎日月の年齢を見る。
それなのに手に入れたら壊れるからと
冷たい風ばかり吹かせるものだから
少しそれに釣られて雨が降って
少しだけの暖かい風で言葉があふれるの。
「月は何時でも笑っていて良いわね。」
三日月しか興味が無いものだから
他の月など忘れてしまい少しだけ毒を吐く。