第6章 不死川実弥 (R18)□笑う月
『…………鬼は大嫌れェだ…。』
「…………知ってるよ。大丈夫。」
冷たい風は嫌いだから早く暖かい風が欲しい。
何時も何時も焦らしてばかり。
早く紡いで優しい風を。心地よい夜の風を。
そう毎回願うけど、すぐに雲が雨を降らす。
揃いの雨はいつも止まずに互いの肩を濡らす。
『お前は何なんだ、なんで俺から消えねェ。』
「知らない。自分の事は分からないの。」
俺の風で愛を紡げとお前は急かす。
それが暖かいとでも思っているのか
綺麗な三日月が早く早くと俺を急かす。
『抱かせろ。……クソみてぇに鳴けよ。』
「もう無理よ、雨が降ってるから。」
俺は鬼より姫華が怖い。
それなのに、その背で笑う三日月が
まるで姫華本心のようで
お前の拒絶の言葉が天邪鬼に聞こえて
何時も俺は冷たいまま、その首筋に食らいつく。
「……っ、ぁ…。泣きながら………
抱いてるのはどっちなのかしら?」
少しばかり優しい風が吹いたから
冷たい雨を拭って震える貴方を抱きしめる。