第6章 不死川実弥 (R18)□笑う月
□笑う月
夜空に綺麗な三日月ひとつ。
静かな夜に男がひとりと女がひとり。
揃いで2つ、静かに紡ぐ。
息災ですかと女が笑えば
お前はどうだと男は急かす。
やけに綺麗な三日月がシラケた2人を嘲笑う。
『俺は、鬼だ大っ嫌れェなんだァ。』
「知ってるよ、そんなこと。」
三日月を背負った姫華は
目をその三日月と揃いにして笑う。
やけに優しいその月は、いつも俺を包み込む。
『おめぇの事が、忘れらんねェ。』
「それも知ってるよ、当たり前だもの。」
その三日月に雲がかかれば
それと揃いにに姫華の目も曇る。
その月は俺の事を酷く冷たく拒絶する。
『死ね………クソ鬼ィ……。』
「大丈夫、全部知ってるから。」
また三日月が笑う。
俺はそれに情けない雨を降らす。
とめどない雨が何時までも何時までも
風は冷たいまま静かに夜をかけていく。
『いつも…いつも姫華はそうだァ。』
「実弥も、いつもいつも…こうじゃない。」
貴方の風は強くて冷たくて
すぐ三日月に雲を呼んできた。
私はその雲を心底嫌っているから
貴方と揃いの雨を降らして紛らわす。