第39章 道化師の奇跡
コンコン
「イルマくんいるー?」
重い空気を払拭したのは、優しいおじいさんの声。
「用務員のおっちゃん。どうした?」
「やぁーイルマくんが困ってるって言うから、許可書?って言うの?持ってきたよ。ほら、これ」
「……ありがとう。」
「プラス1。ここへきて、」
「ははは、嬉しいけどね、」
「まだたりないか。おーい、やっぱりもっといるってよー」
ああ、何て嬉しい光景。
いつも少なからずお世話になっている職員さん達が集まってくれた。
手には許可書を持って。
頑張れ、期待してる、また手伝ってね、
今度は負けないよ、手伝ってくれてありがとう、
暖かいな。
「みんな、イルマくんのファンなんだから」
「アッハッハッハッ!そっか、ファンか!!」
皆から受け取った許可書をテーブルの上に並べる。
「さて、カルエゴ卿。
貴方の主張は全て正しい…我々はまだ未熟でツメが甘い。
みんなに笑われて、馬鹿にされてー
問題児クラスは確かに道化師のようだ。
だが、この一件…今日に限っては、
これが悪魔学校の総意らしい」
控える職員さんたち。
「道化師は愚者だが、民衆の心を動かすんだ
皆、問題児クラスが王の教室に入るのを見たくなった…興味の勝利だ!
書類が揃ったらサインしてくれるんだろ?」
ぐうの音も出ないカルエゴ先生が、口約通り、許可書にサインし、
問題児クラスは王の教室を勝ち取った。
「問題児クラス!王の教室に移動決定!!」
入魔を担いでサブノック君が人垣を歩いていく。
それに続いてクラスメイト達も職員さん達も出ていった。
「やられましたね。」
「ー全く、いつも思い通りにならん……問題児どもめ」
深いため息とともに呟かれた台詞。
「……で、置いてきぼりか?」
「ははは、そうみたいです。まあ、追いかける気にはなれませんが。揉みくちゃで、ボロボロになりそうだし。」
大半が出ていった職員室。
サブノック君が入魔だけ連れてったので、これ幸いととどまった。
「やー、先生の殺意に肝が冷えました。」
「あわよくば、心の臓を止めてやろうと思ったが?」
「入魔は止まらないでしょうね?私は、止まりかけた気がしますが。」
「……そうなったら、シチロウに私の心臓が止められてしまうな。」
「そおですか?」
「アホ理事長に開閉の許可をとらんとな。」
「ああ、よろしくお願いします。」
