第27章 前夜祭
バラムside
いま、この子は何を言ったんだろうか?
「ごめんね。もう一度言ってくれる?」
「あの。……人間です。私は、人間なんです。」
まさか。
そんな。
「本当に?」
「はい。」
「………!!!!」
「えっ!?バラム先生、」
凄い勢いで離れた。
「まって、近づいちゃダメ。ダメだよ。」
「そ、そんな……」
「ああ、ごめんよ。違うんだ。き、緊張するから!」
「??」
拒否ととらえて泣き出すものだから、慌てた。
だって、目の前に僕の永年の、夢にまで見た生き物が現れたんだ。
興奮して、飛びかかったら、壊れてしまいそうだ。
はぁ、はぁ、心臓が壊れそう。
ああ、撫で回したい!
どうしよう!
自分と葛藤してたら、
「私、やっぱり、ご迷惑ですよね。……いつも、他人との距離の計りかたを間違えちゃうんです。……お暇します。」
「ちょっと、待って、違うよ。動かないで、今、行くからね?」
慌てて引き留めた。
マイナス思考で、思い込みが激しい。
対応を間違えると、危険だ。
「……触って良い?」
「はい。」
そっと、さわったら、激しく感動した。
それこそ、触れた瞬間に身体に電気が走ったみたいな衝撃。
「もっと、触って下さい。」
「!?そんなこと、」
「ダメ、ですか?」
涙目で懇願されたら、拒めない。
何時もなら嬉しすぎる申し出だけど、人間だって言われて、どうしたら良いんだ!
欲望と好奇心には勝てなかった。
膝に乗せて、頭を撫でている。
「美雪ちゃんは警戒心と言うものがないのかい?」
「……警戒心が拗れて、こんな、めんどくさい性格なんですが…」
「そっかー」
「……私、寂しいのだと思うんです。」
彼女は、自分で考えた結論を話し始めた。
人間界での生活。
人間関係。
他人との関係は希薄で、言いたいことが言えない世界。
理不尽に縛られて、自分の存在すら無くなる環境。
「他者に認められるには、それなりの代価が必要で、それが用意できない人間は、詐取され続ける。」
悪魔の世界より恐ろしい。
「心は麻痺して、自分さえ無くして、ただ生きるだけの屍。」
悲痛な叫びだった。
人間とは、こんな生き物何だと認識が改めさせられるような気分だった。