第85章 成長の一端
「おばさんの頭にはキツイ環境だよ…」
ブラックな環境でこなしていた業務は、
勤続何年の頃には
ただただ数字をまとめ、
紙に書いてある文字の羅列をひたすらにキーボードを叩いて、パソコンの画面に打ち込む作業になっていた。
もう、考えることなんて何もない。
無の境地で、ひたすらに打ち込む。
手首がキーボードの叩きすぎで腱鞘炎になり、
腕が筋肉痙攣をおこして、爪は短く切っても割れてしまう。
長時間座ってるからか、痔主になりかけた。
(痔だけは(死ぬ気で)ケアして治った)
きっと、私じゃなくても出来ていた仕事だ。
考えなくても、言われた通りにしていればいいのだから。
考えることを止めた。
それからの学生生活。
正直、無理かと思っていたのに、
十数年ぶりの勉強が、案外出来てしまっているから、びっくり。
それでも、許容範囲外なことは無理だ。
……いや、言い訳だな。
嫌われるのが、失望されるのが怖いのだ。
子供の頃に同級生に言った些細なことがきっかけで、
仲違いをして、嫌がらせを受けたことがある。
イジメ、までは行かなかったが、
陰湿だったことは陰湿だった。
だから、自分の言動に自信が持てないことが良くある。
それでも、踏ん張るべきだと思うから、
逃げずにここ(魔界)に居ようと思う。
それでも、いつ、見放されてしまうかとヒヤヒヤしている。
とくに、カルエゴ先生は、……特別だから。
怖いのに、離れられない、諦められないのは、
単なる好奇心だけではないはず。
これは、確かに恋だ。
生半可な気持ちじゃないはず。
…………………たぶん。
だって、リスクが高すぎるでしょ?
「…………やっぱ、諦めるべき?
最後の恋なんて、」
「諦めるのか?」
独り言のつもりで呟いたら返事が返ってきてビックリした!
「ギャッ!?」
「粛に。」
図書館で騒ぐのは駄目。
なのはわかってるけど、
至近距離とか、突然の登場とか
黙らせるために口を手で塞ぐのとかは止めてください。
心臓が色々とヤバイです。
「……で、何を諦めるのだ?」
「…………内緒です。」
「……ほう?」
ジト目、やめて下さい。
「まあ、俺が言えた義理ではないが、
制約を課せられて、折れそうになるのはわからなくはない。
それでも、乗り越えることを期待する。」
何を、とは聞かない。
期待されているのは、色々だから。
