第78章 見えないけど
「お願い、出てきてよ、私を、見捨てないで、」
暫く弾いたけど、言葉を投げかけたけど、
プルソンは、姿を表さなかった。
心がおれそうになる。
見えない糸にして、支えにしてたのは、
私だけだったみたい。
もう、弾けなくなった。
「プルソン、の、バカ、」
バイオリンをおろした。
止めどなく、涙が溢れて、
見なくても、顔はぐちゃぐちゃだと解る。
三十路を越えて、友達の為にここまで泣いたのは、
初めての事かもしれない。
それほど、私の中では、年下の彼を、
入間がアズ君とクララに向ける気持ちを抱くにたる存在だと認めて居たのだ。
さみしい、悲しい、
君に、戻ってもらえるようにするには、
どうしたら良いんだろうか。
ひとしきり泣いて、声が枯れた。
目元は泣きすぎて、ヒリヒリする。
久しぶりに泣いたら、疲れた。
おごっていたのかもしれない。
私の前になら出てきてくれると。
気持ちは同じだろうと。
「…居ないのかな?
私も、入間みたいに、プルソンが戻ってきてくれるように、頑張るから、待ってて、……戻ってきたら、がつんとやってやるから!」
私は、絶対に、離してやらないと、心に決めて、
教室を後にした。
「……………馬鹿、だよ。」
一部始終、聞いていたプルソンは、柱の影で膝を抱え、顔を真っ赤にしていた。
プルソンside
初めて、出来た友達。
存在感を消している自分を初めて、
認識出来た、家族以外のたった一人の人物。
笑う顔が眩しかった。
彼女の話しは、楽しかったし、まるで、お伽噺のようだった。
不思議で、可笑しくて。
博識で、空想が好きで。
全てが眩しかった。
存在が、価値観が、立ち位置が、
でも、大切な友達。
大切な「親友」
大切な、女性(ひと)
でも、友達より、自分の保身を取ろうとしてる。
そんな自分が、皆の、美雪の前に出ていって良いわけがない。
「……ダメ、だよ。
僕じゃ、君の隣にたってられないんだよ……」
身の程をわきまえない、うぬぼれやは、
太陽に焼かれて、奈落に堕ちるんだ。
だから、僕は、君を傷つけても、
遠くにいかなくちゃ。
「………さみしい………」
そんな感情、捨てなきゃいけないのに……
さみしい…