第78章 見えないけど
「ーーー以上。
都合により、プルソン・ソイは退学のため準備中だ。」
はぁ!?
何の冗談?
バカな、バカなこと!?
教室の中は、皆が声をあげ、嘘だろ?とか信じられない!とか、戸惑いの声と、
カルエゴ先生のプルソン君を遠回しにディスるような表現の言葉をはいて、皆を刺激する。
何が、どうなってるの。
教室の中にプルソン君は居ない。
私に、彼の家系能力は効かない。
それでも、見つけられないのか、
「ーー行方不明のプルソンを探さねばならんのだからな。」
えっ?
行方不明?
先生の衝撃的な言葉が耳を過ぎていって、現実に思考を引き戻した。
「迷ってるんだ…」
そう、プルソン君は、練習を頑張っていた。
親に言われたからと言って、だから、すんなり戻れるほど未練がない訳じゃない。
だから、迷ってる?
出たいと、皆と、音楽祭に出たいと思ってくれてる。
だったら、ここ(教室)にいるはず。
皆が居るけど、姿をみせないプルソン君に声をかける。
「僕たちは練習するよ!君の演奏に負けないように。皆で、14人で!ステージに立つために!!」
クラスメイト達は教室を出て、練習に向かった。
私は、一人、教室に残る。
バイオリンを出して、構える。
キューッ、と弦をひけば、
高い音が出た。
リリス・カーペットの曲を引き始める。
「水くさいじゃないの。
私たちは友達でしょ?男女の友情なんて、成立しないとかいうやついるけどさ、私は、気にしない。」
喋りながら、バイオリンを引く。
「友達だと、私だけが思ってたの?」
プルソン君を習い、バイオリンの音に気持ちをのせる。
それだけではとどまらない気持ちが、口から出る。
「私だけが、貴方を〈親友〉だと、思ってたの?
ねぇ、答えてよ、プルソン!」
入間を〈弟〉だと認識して、仲良くはしている。
もう、家族なんだと、染み付いてしまって、
肉親に対してのボーダーラインを引いている自分がいて、入間に話せないことを、プルソンに話してる事は、割とある。
へこむから言えない家族への愚痴も、
好きだから、言えないカルエゴ先生への気持ちも、
ボカシながらも話せたのは、プルソンにだけ。
おじいちゃんにも、バラム先生にも言えなかったことを、黙って聞いてくれて、アドバイスをくれたのは、
プルソンだけだった。
黙って居なくなるとか、そんなの、許さない。
