第71章 告白
美雪side
私は、ずるい女だ。
相手の優しさに甘えてる。
カルエゴ先生の罪悪の感情につけこんでいる。
本当は、頭の中にあるしがらみからくる全ての物事を考えないで、貴方に打ち明けて、喋ってしまいたい。
その結果、私が食べられる羽目になっても、
貴方やおじいちゃん、引いては、入間さえも犠牲にしていいとすら、思った。
でも、そんなこと、できない。
怖がりで、臆病者の私は、
やっと手に入れたこの、ささやかな世界を手放したくはない。
騙し続けることが、先の未来で、貴方の事を更に苦しめることになるとしても、
今さえ、良ければ、良い。
「…ごめんなさい。」
小さく、謝罪の言葉をこぼした。
その、小さな言葉に反応して、振り返る貴方。
「どうした?」
「…何でもないです。」
今は、偽りの私でもいい。
貴方が愛してくれる、虚像の私でも。
暫くは、自意識過剰な私に酔いしれていよう。
貴方の気持ちが離れてしまうまで。
貴方のことが好きだけど、人の気持ちなんて何時までも続くことではないから。
もし、私の正体がばれて、
死ななければいけなくなったりしたら、
最後は、貴方に食べられてしまいたい。
……何てね?
「先生、ありがとうございました。」
もう、サリバン邸はすぐそこで、
また、明日も学校はある。
わかれがたくなる前に、気持ちを引き締めるために、
私から、離れよう。
「…もう少し、あるぞ?」
「いいえ。もう、いきます。おやすみなさい。
明日、学校で。」
「…ああ。おやすみ。」
別れを告げて、走り出す。
振り返らない。
「お帰りなさいませ。」
「…ただいまです。」
邸の玄関を潜ると、オペラさんが出迎えてくれた。
顔を見て、ほっとしたのは、きっと、
ドロドロした感情を拭ってくれたような気がしたからだと思う。
「…直ぐお食事ですよ。」
「はぁーい。ご飯だ!」
気持ちを切り替えて、食堂に向かった。
オペラside
「……美雪様を泣かせたら、承知しませんからね。………カルエゴくん。」
不適に笑うその人を見かけたサリバンは、思わず、震え上がったとか。