第67章 スキ魔⑰
入間が、今日は、アメリ生徒会長とお菓子を作るのだと嬉しそうにしていた。
「美雪さんも一緒に作らない?」
「…気遣ってくれてありがとう。
せっかくだけど、今日は、朝からしんどくて。
辞退するね?」
「じぁ!作ったもの、食べてね?」
「うん。楽しみにしてるね。」
そう言って、見送ったものの、その後に遠くで爆発音。
何?
使い魔の蒼ちゃんが、教えてくれたのは、
入間が、キッチンで調理器具を爆発させたらしい、と。
「…何でそんなことに?」
「入間様、料理、音痴。全部煮る。全部、入れる。
殻も、皮も、なんでも。」
あー解ったかも。
目分量何てもんじゃないんだな。
ある分だけ入れちゃうのか。
勿体無い精神?
「付き添いの女の子も?」
「馬鹿力。混ぜると、折る。叩くと、粉砕。切ると、真っ二つ。」
「ひぇー(゚ロ゚ノ)ノ」
アメリ生徒会長も料理音痴か。
「オペラさんは?」
「付き添いで、指導、してる。」
「あちゃー、ご愁傷さまです。オペラさん。」
二人の指導に全力であたるであろう、変なところ生真面目なお兄さん執事を思い浮かべ、合掌。
うっつら、うっつらしてるうちに、爆発音はしなくなって、甘い香りが、漸く漂いはじめて、
ああ、オペラさんの努力が実ったな、と頭の隅で思った。
完全に寝てて、気がついたら、もう、夕方に成ってました。
甘い香りが更に強くなっていて、何で?って思ったら、ベッド脇のチェストの上に小さなメモと一緒にラッピングされたクッキーが置いてあって、
「…入間ったら、」
メモを読んだら、可愛らしくて、涙が滲んだ。
「『大好きな美雪姉さん。僕は、何時まででも、何時でも、貴女の味方です。
貴女の弟、入間より。』」
私は、私の為であり、皆の為にも立ち上がって見せなきゃ。
「ありがとう、入間。」
私は、弟の言葉を大事に心のなかにしまいこんだ。