第56章 過ぎ去りしは、
首輪は買わなかったけど、オペラさんには腕につけている革ひもをプレゼントさせてもらった。
革ひもの近くには、紳士向けのアクセサリーが色々並んでる。
そこに、黒よりの紫色の石がついたループタイがあった。
……あ、これとか良いな。
あの人に似合いそう。
その色を見て、パッと頭に浮かんだのは、最近、特に気になるあの人で。
「……カルエゴくんにですか?」
「!?」
手にとってみていた訳じゃないのに、何で解ったんだろう?
「いいんじゃないですか?彼によく似合いそうですよ。」
「……これ、そこそこ値が張りますよね?」
「そうですね。」
「じゃあ、これ買います。」
「…本当にカルエゴくんにですか?」
「?そうです。どうせ、隠していてもバレるんですから、取り繕うのはやめました。」
「そうですか。」
「反対します?」
「いいえ?むしろ、カルエゴくんなら安心して任せられます。」
「そうなんですね。反対されると思いました。」
「まさか。お気に入りの後輩が、大切なお嬢様とセットに成るなら、それは、大変幸せです。」
「セットって。まるで、バーゲンセールの割引品になった気分ですよ。」
「美味しいとこ取りって言うことで。」
てっきり、反対されると思ってた。
それなのに、応援してる風な態度は、肩透かし。
カルエゴ先生は嫌がるだろうけど、私は、とても強力な味方を得た。
本屋に寄ると、おじいちゃんは、新しい教科書などを買ってくれた。
「美雪ちゃんはもう、使えてるけど、新学期になれば、覚える術も増えるし、術を使う機会出てくるし、例えば、"フラクタル"」
「わぁ~?」
おー入間が浮いてる。
「調整には練習が必要だろうけど、慣れれば、応用も効く。」
「ぎゃぁ!?」
上から何かが勢いよく降ってきた。
おじいちゃん、お手柄。
万引き犯を捕まえた。
でも、凄い。
いつ、気がついたのかな?
全然わからなかった。
本屋さんに値引きしてもらって大喜びのおじいちゃん。
唸るほどお金持ちなのにね?
本当に不思議な悪魔だ。