• テキストサイズ

異次元の出会い(魔入間)

第55章 スキ魔⑭



纏めた買い物を持って、美雪の部屋のドアをノックした。

返事はなく、聞き耳をたてるも、物音はしない。
返事がないが、入るか入らないか、暫し迷い、結局、部屋に入ることを選んだ。

部屋に入ると、充満する香の香りに気がつく。

「(臭い消しの香か、)」

オペラ先輩の得意な薬の臭い。
結構強力な臭い消しで、どんな酷い臭いもたちどころにしなくなると言うシロモノ。
この香を焚いてるとは、よっぽど臭いを嗅がれたくないのか。

ベッド脇のボストンバッグの隣に買い物袋を置いておく。
そっと、ベッドに寝ている美雪の顔を覗く。
顔色は悪く、うっすらと額に汗をかいていた。

熱でも出しているのかと思い、右手を美雪の左頬に伸ばした。
手が頬に触れた瞬間、体がビクッと反応して、美雪は目を覚ました。

「……カルエゴ先生?」
「……すまない。起こしたか?」
「………いいえ。」

少し、呂律の回りがよくない。
寝ぼけているようだ。

目もまだトロンとしてる。
……ああ、可愛いな。

「……私、夢をみてるんですね。」
「夢?」
「とっても、幸せな夢。何て、都合のいい夢なんでしょう。失礼な態度をとったのに、厳しい先生が、優しく語りかけてくださるなんて、幸せ過ぎますよ。
……何時までも、覚めなければいいのに。」
「……今だけは、幸せな気持ちでいればいい。」
「はい。先生、」

すうっと寝てしまった美雪。
少し、話を合わせただけ。
ほほが緩む。

「…俺も、お前と過ごせるのは、幸せだ。」

そっと、額に触れるだけのキスを落とし、部屋を出る。


知らぬは、本人ばかりなり。
(知らぬは亭主ばかりなりの言いかえ。)

気がついてないのは、本人達ばかり。


/ 217ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp