第54章 避難の後半
呆れ顔のカルエゴ先生。
「…具合が悪かったのか?」
「……生理です。」
「…そうか。帰るぞ。」
生理では仕方ないが、具合の悪いのに連れまわすのは問題有りなので、強制帰宅となった。
「……申し訳ありません。」
「…しょうがないだろう?」
カルエゴ宅に帰ってきて、与えられた部屋に運んで貰った。
なかば、無理を言って、付き合って貰ったのに、先生の休みを無駄にしてしまった。
そんな気持ちから、謝罪の言葉しか出なかった。
「本当に、すみませんでした。」
「……もう、謝るな。何か手伝うことは有るか?」
「……いいえ。……男の方に見られるのは、恥ずかしいので、自分でします。」
「…そうか。何かあれば、声をかけろ。」
手伝ってくれると言うのを断った。
情けなく思う気持ちもあったが、
臭いを知られたくない。
経血の匂いは、悪魔を惑わす。
血の匂いと変わらないから。
カルエゴ先生がそれを嗅いで、暴走なんて事になったら、それこそ、居たたまれない。
私は、とんだ貧乏神だ。
怠い身体でノロノロと動いて、ベッドの横に置いてあるオペラさんに持ってきてもらったバッグの中から取り出したのは、防水シートと吸水シート。
それにタオルを出して順番に敷く。
次に臭い消しのお香を焚く。
それをチェストの上に置く。
オペラさんいわく、部屋に充満する経血の臭いを消すための処置らしい。
幸い、セーラーワンピには血はついてない。
寝巻きにしているワンピースに着替える。
脱いだものは、後で洗濯するのに避けておく。
ポシェットの中の汚れ物は、屋敷に帰ったら、オペラさんに処分してもらうため、厳重にビニール袋に入れて、ボストンバッグに詰める。
ふう。
一連の作業を終えて、
バラム先生の薬を飲んで、横になると、直ぐ、眠気がやって来て、深い眠りにつく。
眠る前に先生の事が脳裏に浮かぶ。
先生、ごめんなさい。
そう、心の中で呟いた。