第45章 家庭訪問
「……魔術の扱いが上手いな?」
「そうですか?……バラム先生に色々と教えてもらってます。」
1年生ではまだ出来ないことをして見せたので、その事を言っているのでしょう。
「……入間ほど何か成果を出せてる訳じゃないので、私が出来ることを1つづつやっていこうと思って。呪文を読むだけじゃなくて、実践して、ものにしてくようにしてます。バラム先生も、自分の範疇(はんちゅう)で出来るならやっていった方が良いと言ってくれましたので。」
「……努力家だな。
理事長にも伝えたが、お前は努力家だが、入間同様、何でも相談しないで自分で解決しようと考えるきらいがある。
入間は責任感と自己犠牲を一緒くたに考えている節があって、そこは看過することは出来ない。お前達はもっと、周りを、大人を頼れ。
迷惑をかけるのと、心配をかけるのとでは、全然違うのだからな。」
「……はい。」
「……泣かせたかった訳じゃない。」
「う、嬉し、涙です。」
優しい言葉をかけられて、胸がいっぱいになって、気持ちが涙として溢れた。
周りの大人は皆、私達を大事に思っているのだと、再認識した。
先生がハンカチで涙を拭ってくれた。
「あ、ありがとうございます。」
「……泣かせてしまったからな。」
気恥ずかしくなってしまった。
「今度、お菓子。ご馳走しますよ。」
「……あまり甘いのは苦手だ。」
「じゃあ、甘くないのを。」
「それは菓子か?」
「ビターとかあるじゃないですか。」
「そう言うものか?」
「そう言うもんです。」
それから、おしゃべりを楽しんでいた。
暫くして、オペラさんが部屋に来て、カルエゴ先生を探していた。
「さっきまで居たけど、(オペラさんを)察知して、逃げてったよ?」
「……そうですか。惜しいことをしました。」
「…ねぇ、その顔は駄目だよ?」
「…どんな顔ですか?」
「獲物を逃した顔。オペラさんはカルエゴ先生の事好きなんだね。」
「……可愛い後輩です。」
「へぇ~」
「美雪様はもう眠られます?」
「そうだね。明日は学校だし?」
「此方は片付けときますね。ゆっくりお休み下さい。」
「はーい。」
出ていくオペラさんを見送る。
ドアが閉まり、気配は遠退いていく。
どのぐらいかして、ベッドの下からカルエゴ先生が這い出してきた。
「バレてましたかね?」
「多分な。」
