第10章 抗えない(運命)1時透無一郎
無一郎の冷たい一言に、涙目になりながら気が動転するに
冗談だと舌を出しながら自分も好きだと告げた。
『…わ、私っ…お、鬼ですよぉおっ』
「うん、知ってる」
『…万が一でもっ…貴方を襲ってしまったらぁっっ』
「大丈夫、その時は僕が君を止めるから」
無一郎の言う止めるは息の根。
それでもその言葉が嬉しくて無一郎にすがるように抱きついた。
背中を撫でながらあやす無一郎に
は更に泣き出してしまう。
泣き止むまで数分の時が経っていた。
「…もうそろそろ泣き止んだら?」
『ず、ずみまぜんっ』
泣きすぎたからか、鼻声で謝るに無一郎は吹き出して笑う。
そんな彼にもつられて笑い
暗い洞穴の中は温かい笑い声で包まれる。
「…ねぇ、どうして君は鬼になったの?」
『……私、小さな村に住んでたんです』
小さな村だった。
笑顔が絶えない人情溢れた小さな村に私は家族と一緒に暮らしていた。
いつからか、村の人たちが何人も消息をたって。
村の人たちは神隠しと恐れていた。
私は当時10歳で、
神隠しなんてないものと思っていた。
きっと悪い奴等が村の人たちをいじめたんだって。
そう思った私は強くなろうと、強くなって村の人達を守れるようになろうとよく家を抜け出しては森で体を鍛えていた。
そんなある日の事、自分より背の高い鬼が目の前にいて、六目でこちらをじろりと睨んだ。直感的に殺されると思った。だけれど、その鬼は何を思ったのか鬼にならないかと聞いてきた。この血を飲めば強くなると…。