第43章 祝言をあげよう 時透無一郎
朧気な眼差しは私を見ていて、
歯切れ悪く言い返す私に無一郎さんは暫く何かを考えるように小首を傾げる。
『それに、無一郎さんは今は記憶がないから簡単に言えるのです…思い出したらきっと後悔すると思います』
「何を根拠にそんなこと言えるわけ?僕が君と一緒になりたいから、君に伝えている…が思う以上に僕は君に惹かれてるみたい」
「が自分の事嫌うなら、それ以上に僕が愛するよ…それだけじゃ駄目?不満?」
無一郎さんは私に少し歩み寄ると、ぽんぽんと頭に手置いて優しく撫でる。
自分より年下のしかも上司に頭を撫でられるとは夢にも思わなかった。
それと同時に安心からか涙がじんわりと溢れてくる。
『もし、無一郎さんが忘れたらどうするのですかっ』
「なら、が言って?僕がこの事を忘れても気持ちは変わらないから」
『私、無一郎さんに依存するかもしれませんよ』
「だったら、僕も同じくらいを愛するよ」
無一郎さんの抱擁にやっと自分の存在が認められ、自分の居場所に辿り着いたような気持ちになる。
きっと無一郎さんは今日の事を忘れてしまうけれど、今の言葉がとても嬉しくて無一郎さんが忘れたとしても私は忘れない。