第10章 抗えない(運命)1時透無一郎
『…血を飲んだ私はこうして鬼になりました。
守れたのは何もなく、村の人達はその鬼に殺され全滅しました
私に残ったのはこの醜い姿と渇きが消えないこの体だけ』
「話してくれてありがとう…は醜くないよ」
優しく笑う無一郎にぎゅっと抱き締められる。なんて温かいのだろう。久しぶりに人の温もりを感じた。
その日は無一郎さんは泊まってくれて、朝がくるまでとても幸せな時間を過ごした。
朝が来ても無一郎さんは帰ることはなく、側に居てくれた。
『私、とても幸せですっ…無一郎さんにお会いできて…こうやってお話しして…』
無一郎さんに寄りかかりながら、自分の気持ちを正直に伝える。
私は鬼であっていつ死ぬかわからない。
無一郎さんに守ってもらうのは
絶対嫌だから。
自分のせいで大切な人の傷つく姿は見たくない。
そんな想いは口にはしないけれど、その時がきてもきっと私に迷いはないのだろう。
「…僕も…と居る時間が一番好き」
お互い見つめあいながらどちらともなく口づけを交わした。
甘い雰囲気に頬を染める。
本来は敵同士である二人だが…芽生え始めた気持ちはやがて花を咲かせるのだった。