第10章 抗えない(運命)1時透無一郎
動けない無一郎を葉っぱでできたクッションの上に寝かせる。
抵抗してない無一郎を見て嬉しさが込み上げてくる。
慣れないながらも必死に看病する
に無一郎は憎悪がいつのまにか消えたのを不思議に思った。
翌日。
無一郎はまだ動けないままだ。
水を飲ませてくれているから、喉は渇くことはないけれど
昨日からずっとお腹を空かせていた
警戒を解いたのか、腹の虫が主張しはじめる。
「……」
『まぁ…そうですよね…何かお腹にたまるもの作りますね!』
は張り切ったように元気に声を出し、洞穴から出ていった。
まだ暗いとはいえ、まもなく夜が明けるのに大丈夫だろうか…
無一郎はそう思ったが、所詮はただの鬼で、殺さないといけない存在。
考えた無一郎は何も言わず静かに目を閉じた。
「(皆心配してるかな…お館様…僕がしてることは立派な隊律違反だ…)」
柱である僕がまさか鬼を生かすなんて
自分でも不思議でたまらない。
何故、鬼の頸を跳ねなかったのか。
今だって殺ろうと思えばできるはずなのにまるで、体が拒絶するように動けなかった。
自分の立場をわかっていながら、
鬼を殺すのに躊躇うなんて、言語道断だ。
ましてや柱である身。
この事実を他の人に知られれば、他の剣士に示しがつかない。
戻れば処罰が待ってる
なんて考えが頭を巡るもやはり殺す決断はできなかった。