第10章 抗えない(運命)1時透無一郎
そして、次探したのは人間だった時に使ってた救急箱。
それを取り出して、
傷ついた少年の頬や腕に消毒液をかけてからガーゼと包帯を使い手当てをした。
服を捲れば、少年のあどけない顔とは想像もつかないような鍛え抜かれた逞しい腹筋。
お腹の傷も同じように綺麗にしてから包帯でぐるぐると巻き付けた。
動けないのはきっと、深手を負ったのも理由の一つなのだが…鬼の血界術にやられたのだろう…。
その術式を解除すればきっと、目を覚ます。
『……』
私の血界術によればそんなの容易い。
鬼の癖に治すことしか出来ないのだから。
なのに、戸惑う私はきっと
これから起こる出来事に恐れているのだろう…。
『…それでもいいかもしれないね…』
「…っ…?!……かっ……霞の呼っ…」
一人言のつもりで呟いた言葉に
少年は目を開ける。
驚いた……流石は柱の階級を持つだけあると呑気に思う。
普通の人なら目を覚ますことはおろか動かすなんて無理だろう。
鬼狩りとてそれは同じで
並みの人間ではないと確信をついた。
うっすら開いた少年の瞳は憎悪で歪んでいて、刀を抜こうと腕を必死に腰へと伸ばしていた。
『ごめんね…今治してあげるからね』
自分の手をもう片方の爪で切って
、少年の体に血を垂らす。
『……っ…』
流れ出る血が少年の体に垂れ落ちれば白い光となって、少年の体を包み込んだ。
「っ?!……!」
眩い光が消え動けるようになった少年は上体を起こし瞬時に私との距離をとる。
抜かれた刀身は洞穴という暗さなのにとても綺麗に映えた。