第10章 抗えない(運命)1時透無一郎
『(今日は案外近いな…)』
森を抜け狭い小道に出ると
男の子がうつ伏せに地面へと倒れていた。少年から出る血液は既に水溜まりとなって少年を中心に広がっていく。
『…まだ、若い…可哀想に…』
香りに誘われるように少しずつ近づくも、微動だにしない。
やはり死んでるのだろうか…。
そう思い私は少年の顔を見る為
体をひっくり返す。
『っ…?!お、鬼狩りっ…』
「…っ…」
体を仰向けにさせれば、最初に目に映るのは、鬼狩りなら誰しも所持してる刀だ。
しかも、気配からするにこの人は柱の階級じゃないだろうか。
『…っ…』
食べようと近づいたのはいいけれど、苦しそうに呻く少年。
そう…この子はまだ、生きているのだ。瀕死の状態だが、僅かに呼吸音が聞こえる。
ここじゃいずれ他の鬼が来て、この子を食べるだろう…
そう思った私は自分の寝所に、少年を持ち帰った。
『…私ってバカだな…』
少年を洞穴につれた後、床へと静かに置いた。
私は何がしたいのだろうか…。
生きた人間…それも、鬼狩りを自分の近くに置いておくとは…
それにしても、少年の体から流れる血液に嫌でも反応してしまう。
美味しそうな香りに目眩さえしてくる。
気がつけば涎をたらたらと流してる自分がそこにはいて
とても悲しい気分になった。
このまま手当てをしても、少年を恐がらせるだけ…そう思った私は錆びれて土が被った小汚い箱を取り出した。
中には鬼になってから集めたガラクタが入っている
ご飯が食べられない時は森の中を探索して面白いものを集めては時間を潰していた。
きらきら光るもの、綺麗な石、面白い形をした葉っぱ、スコップ等多種多様な物が入っている。その中から鉄の棒を取り出して口に咥える。これで幾分かましになるだろう……