第9章 *極悪非道 時透無一郎
『…手枷なんて真似…どういうつもり?』
「が僕のものにならないなら…手元に置くだけでいいかなって」
なんて自分勝手な発言だろうか。
私はそもそも物ではないし、
無一郎がやってるのは紛れもなく犯罪だ。
『…今なら全て無かったことにするから、これ外して』
なるべく相手を刺激しないように。冷静な対処をしなければ、自分に明るい未来はない。
そう考えて、言葉を選ぶも
今の無一郎にとって地雷だったようでその言葉を選んだ自分にひどく後悔した。
「全て無かったことにしたいなんて軽々しく言うなよ…俺はあの時から大事な事、全て忘れてしまう…」
見上げる表情は、とても悲しみを帯びていて
自分の状況が危ないというのに思わず手を伸ばし頬に触れてしまった。
「…ねぇ、は僕のものになってくれるよね?」
手から伝わる体温が心地良さそうに目を瞑る無一郎は頭を撫でてた手を止め、頬に添う私の手に自分の手を重ねる。
『…ごめんね、もう無理だよ』
「……」
『…竈門君の気持ちを大切にしたい』
「そっか…」
頬から手を離し、重力に従いゆっくりと下ろした。
きっと諦めてくれたんだろう。
手首に付けられてる拘束具もすぐに取り外してくれる。
そんな淡い期待は無一郎の言葉によって無情にも打ち消された。
「何が不満?…あ、もしかして僕が付き合ってるという女の子?
それなら大丈夫だよ…勝手に告白してきて忘れるって忠告してもそれでもいいって言って彼女面してるだけだし
僕が付き合ってるなんて忘れるくらいなんだから、どうでもいい存在で逆に俺が気にかけてたのは…一人だけ」
急に饒舌になる無一郎にまともに思考がついていけない。
続け様に言われた言葉には
背すじが下から上にかけてぞぞぞと悪寒が走った。
「それに…僕、炭治郎と仲いいから傷つけたくないんだよね」