第9章 *極悪非道 時透無一郎
つかの間の休憩時間。
竈門君に会うべく教室を出る。
廊下には既に教室をでて和気あいあいと雑談をかわす生徒で溢れてて、その間を縫うように通り抜ける。
隣の教室に顔をだすも、竈門君は居なくて
別の生徒が我妻君と嘴平君と一緒にどこかへ向かったと言う。
すれ違ったのかと思いその生徒にお礼を告げると、空いた時間を屋上で潰そうと階段に足を向けた。
とんとんと規則的に鳴る足音。
少し息が苦しい。もう少し体力をつけないとと自嘲する。
『風が気持ちいいー』
「うん、とっても」
『っ?!』
錆びれた扉を開けば誰も居ない。
私しか居ないと思ったから、心に思ったことを言葉にすれば思いがけない返答がかえってきてあたふたした。
『む、無一郎?!いたんだね』
「うん、この時間は、来ると思ってさ」
上にある大きな給水タンクを背に座っていた。
足は空中に投げ出され、プラプラと揺らしながら私を見下ろしていた。
『…よく、わかったね…私に何か用事?』
大丈夫、今の私には竈門君がいる。
自分を落ち着かせるように胸の前で両手を握り、無一郎が上から下に飛び降りるのを確認してから近づいた。
「って、炭治郎と付き合ったんだって?」
『…うん、ずっと返事待たせてたから』
「それって本当に好きなの?」
その一言で何かがプツリとキレた気がした。
『…貴方には関係ないっ』
冷静を保つように両手を強く握りなおす。
そうでもしないと想いに蓋をしたのに、まるで沸騰したかのようにかたかた揺れてその隙間から気持ちが溢れそうだった。
「関係なくはないよ…だって、僕
が好きなんだし」
『…は?』
突拍子もなくそう言う無一郎に
思考が停止する。
言ってる意味がわからない。
記憶を無くした無一郎は私に無関心だったし、私も徐々に遠退いたのだから好かれる理由なんて何処にもないわけなのだから。