第9章 *極悪非道 時透無一郎
「あなた大丈夫なの?」
『…大丈夫だよ…もう諦めてるから』
屋上にて昼飯を食べていた私を心配するのは高等部2年神崎あおいだ。
先輩なのだが、彼女の実家が定食屋を経営していて私はそこの常連で仲良くなるのに時間はかからなかった。
今では先輩後輩関係なく、プライベートでもちょくちょく遊ぶ仲で友達を通り越して今じゃ親友。
そんな彼女に秘密事はなく、もちろん、無一郎を好いていて悩んでるのをこうやって相談に乗ってくれてたりするのだ。
「いいの?そんなあっさりと諦めて」
『…うん、これ以上想ってても辛いの…それに、愛するより愛されたいっ…』
自分の感情に蓋をする。そうすれば辛いなんて事は感じることもなく、無一郎が女と一緒にいてもどうだっていいと思えるから。
「…あなたも無一郎さんもほんとにバカね」
それじゃ私は店の手伝いあるからと彼女は先に帰っていった。
手を振りながら見送ったあと、空になった弁当箱を片付けた。
私の心はもう決まっていて、今日返事することになっていたのだ。
「…え?いいのか?」
その日の放課後、体育館裏にてその人を呼び出した。
隣のクラスの男子。竈門炭治郎君。
とても真面目で礼儀正しくそして何よりも優しい。
きっと、この人となら安心して一緒にいられるのだろう。
随分と待たせてた告白の返事。
彼は嬉しそうな顔をして私を抱き締めた。チクリと胸が痛んだ気がしたのはきっと気のせいなんだろう。
その日の帰りは一緒に下校した。