第6章 恋の芽吹き 時透無一郎
「その…昨日は無一郎がすまなかったな。悪気はないんだ…ただ」
『え?あ、…別にもう怒ってないよ…ただ、ビックリしただけ』
そう伝えれば、そうかと安心した顔を見せる有一郎君。
本当に弟思いなんだなと改めて思った。
確かに昨日はイライラしたけど、一夜たてばスッキリする単純な脳ミソ。
それよりまた、有一郎君とお話しできて心に花が咲く。
今日は裁縫らしくて、ポーチを作ることになった。
好きな生地を選んで、ミシンを使いファスナーと表布、裏布を縫い付ける。
私が選んだのは表が緑青で、裏が青磁色だ。
慎重にミシンを稼働させ少しずつポーチの形に作られていく。
タブを仮縫いし、脇も縫い布端を丁寧にカットし表に返せば可愛い形をしたキャラメルポーチが出来上がった。
「綺麗な色してるじゃん」
『わわっ?!有一郎君っ!』
耳もとで聞こえたのは有一郎の声。
密着する体が徐々に熱くなっていくのを感じた。
回りの嫉妬にまみれた視線が背中に突き刺さる。
思ったより出来栄えはいい。
ポーチなのだから普段使い出きるだろう。そう思った私は有一郎に誉められたポーチを大切にしようと思ったのだが…。