第1章 *伝えたかった想いと叶わぬ願い 時透無一郎
今日も今日とて、彼女は有一郎を僕に重ね合わせる。
僕はそれでもいいと思えるようになったのは
やはり感覚が麻痺したからなのだろうか
僕は兄さんと双子なわけだから、外見はそっくりだし
兄さんの真似なんて、弟の僕からしたら簡単だ。
そしたら、きっと君は笑ってくれるんだろうな。
「……馬鹿だな」
が平和に暮らせるよう、他の人が幸せに過ごせるよう今日も鬼を狩る。
鎹烏に言われ現地へと赴けば
巨大な鬼が人間を食べていた。
「鬼狩りと思いきや…チビときた…ウヒヒ…怖くねーな」
「言いたいのはそれだけ?…木偶の坊」
霞の呼吸を使い、容易く鬼の頸に刃をいれる。
鬼は砂のように風に乗って消え失せ
任務は呆気なく終わった。
「…柱の出番なくない?
こんなのに鬼殺隊数人殺られたの?」
やはり、鬼殺隊が弱体化しつつある。
柱の誰かが危惧していたのもわかる気がした。
そして、の待つ我が家へ踵を返した。
『…有一郎…おかえりなさい』
「ただいま」
日輪刀は隠しながら家の中にはいる。
彼女は僕を兄の有一郎だと認識してるからだ。
彼女の記憶の中の僕達は、杣人のまま。
きっと僕が毎夜抜け出してるのは木を伐る仕事に向かうためと思ってるのだろう。
時間的におかしな点は見つかるのだが、彼女が深く考える訳もないので、僕は鬼殺隊であることを隠している。
『有一郎、最近休んでないけど大丈夫なの?』
「…心配ない、最近ここらの山では、手頃な木がたくさんあるからな」
『ふふふ…流石…頼もしいね』
笑う彼女をぎゅっと抱き締めた。
この体温がいつまでも僕の側にあるようにと。
そして、 また今日も任務がある。
鎹烏によればまた同じ場所で鬼が出たとの事。
おかしいな…ちゃんと倒したはずだ。
すぐにそちらへと向かえば
微かに漂う鬼の気配。
日輪刀を手に持ち、気配を辿る。
昨日倒した鬼と似た鬼がそこにはいて
そいつが言うには昨日倒したやつは弟だったらしい。
「そんなこと僕には関係ない…僕も結構忙しい身だから…早く死んでくんない?」
「ふざけるなぁぁぁっ…小童如きがぁぁ!!」