第43章 祝言をあげよう 時透無一郎
人里離れた、雑木林の向こう。
真っ暗な闇が辺りを包んでいた。
近くに外灯はなく、冷たく淀んだ空気だけが二人の肌をピリピリと刺激する。
「…気を付けて」
『…?…はい』
無一郎が鬱蒼とした茂みを掻き分け、奥へと進む。
道は荒れ果てた獣道で、視界が暗闇に慣れるまで何度か転びにそうになった。
それでも、無一郎を見失わないように無一郎の背中を追った。
「…霞の呼吸…肆ノ型…移流斬り」
すると突然、無一郎は何の変哲もないただの空間を切った。
切ったところから、汚い悲鳴と共にぐにゃりと空間が歪み
一匹の鬼がばたりと倒れる。
(…いでーな…よくも俺の顔に傷付けだな…)
鬼はまた姿を消すと、君の悪い笑い声をし消えては現れまた消えては現れて攪乱を狙う。
けれども、無一郎はその鬼を見失うこともなく、捉えていた。
そして、次の瞬間
無一郎の後ろから現れた鬼は無一郎の手によって、灰へと化していった。。
『…凄い、これが柱…』
目の前で突きつけられた、実力の差。
やはり柱ということだけある。
自分がどれ程無力なのかを思い知った。
「…君弱いね…僕が鍛えてあげるから今日から僕の屋敷に住みなよ」
『え?…でも』
「拒否権なんてないよ…柱の命令」
それから私は霞柱の屋敷で生活することになった。