第38章 可愛いあの子 時透無一郎
刀を構え直したは
フゥゥゥゥとする呼吸音の後に
鋭い突きを大岩に向かって放つ。
「凄い…」
『これが最初の剣技で突き技
名を垂天遠霞』
一ヶ所に集中して放つこの技は威力は抜群で放たれた大岩は木端微塵となり辺りに砕け散っていった。
無一郎の瞳が少し明るくなったようには感じた。
元々独学で刀に触れていた事や類い稀なる才能によって無一郎は教えたことをすぐに呑み込み、1カ月越えた頃には柱になってやその周りの人達を驚愕させた。
柱になってからは自分の担当する地区を持ち、毎夜鬼を滅するため管轄地区へと足を運んでいた。
みるみる成長する無一郎がまさかたったの数日で霞の呼吸をマスターし、そして浅い時間の中で選抜試験をも合格するとは思わなかったは未だに信じられず
けれども、己の目に映るのは紛れもない事実なのだ。
『凄いわ…まさかむいちゃんが柱だなんて』
「柱がなんなのかはまだわからないけど…ここまで強くなれたのはお館様やさんのおかげだよ」
そんな事ないと首を静かに振り、無一郎をちょいちょいと手招きした。
素直に近づいた無一郎の頭には手を置いて頭を優しく撫でる。
『柱がどういうものか、その内体感するよ…それに、強くなれたのはむいちゃんが血が滲むような絶え間ない努力をしたから。私達はそれの手伝いをほんの少ししただけ。並大抵では出来ないよ、偉い偉い
』
「さん、そんなに褒めちぎらないでよ」
顔を背いた無一郎の頬は少し赤みを帯びていては可愛いと更に頭を撫で回す。