第38章 可愛いあの子 時透無一郎
それからと無一郎はお互い共有する時間が増えていった。
本来は育手であるは
産屋敷の命により任務にでるのは
珍しいことではなかった。
今回、無一郎に付きっきりで呼吸を指導することになり、は嬉しそうに語り始めた。
『女の子に教えるなんて久しぶりなんだよね!最初はどんな呼吸使えるのか見せてくれる?』
産屋敷から伝えられた無一郎の悲惨な過去。
鬼に襲われ最愛な兄を目の前で腐っていくのを見た無一郎は心に大きな傷を受け記憶障害になってしまった事。
それから怪我も完治してない中、ほぼ独学で刀を握った事。
後は呼吸を教えれば、技として完成する…
無一郎はこくりと頷き、試しに呼吸を見せた。
ゆらりと揺らぐ白い息、瞬時に何の呼吸か見極めたは無一郎に予備の刀を握らせた。
「え…僕刀持ってるけど…」
『うん、でもねよく見て?
刃こぼれ酷くなってるでしょ?こんなに刃こぼれが酷いのは余程刀の扱いか雑か頑張ってる人なんだよ
頑張ってるむいちゃんは偉いよ』
頭を優しく撫でられ、唖然とする無一郎には優しく笑い
続けて『技を出すにはこの刀だと耐えられないから私のを使って』
と微笑んだ。
「……っ」
『どうしたの?』
「な、何でもないですっ…」
照れる無一郎には可愛いと抱き締めまた優しく頭を撫でる。
心地良さそうに目を閉じる無一郎。
始めて見せたその顔は年相応の表情での母性本能が擽られた。
刀を握り直し構える。
最初に見せた呼吸でどの呼吸か気づいたは無一郎に正確な呼吸と動作を教えた。
『よく聞いてね、むいちゃんは霞の呼吸に適してるから、緩急な動きで相手を惑わし、一気に攻めへと移るの』
「僕は霞の呼吸…」
『そう、霞の呼吸使いは久しぶりだな…今から壱ノ型教えてるから見てて』