第36章 願掛けて願いよ届け時透無一郎☆
ただ、違うのは昨日と逆の裏口から出て歩いてる事。
『今日の夕御飯も美味しかったねー!』
「沢山おかわりしてたよね、なんかハムスターみたいだった」
落ち葉でできた絨毯を歩けば、かさりと音がなる。
踏みしめた音がとても心地よく、そして握った手は温かい。
同じ歩幅で歩く無一郎君と私の背丈は一緒で。
いつか無一郎君が私を抜かすのかもしれないと思えば、少し寂しく感じる。
「どうしたの?」
『無一郎君もいつか…私より大きくなるんだなって思ったら寂しくなっちゃって…』
「あぁそんなこと??」
心配して損したという無一郎君を見れば柔らかい笑みをこちらに向ける。
その表情は、彼女である私の特権で。
彼は誰彼構わず笑顔を振りまく人じゃないから、ちょっとした独占欲が顔を出す。
「僕は君より大きくなりたいよ?だってそしたら護れるじゃない?」
『む、無一郎君っ』
笑う彼の背後がキラキラと輝いているように見えるのは何故?
あまりにも素敵に笑って王子様のように言うものだから心臓が止まるかと思ったじゃない…。
赤面して体を硬直させる私に彼はどうしたの?とわざと顔を近づけた。
そんな彼の余裕を壊したくて、自分の顔を彼と合わせて、少しひんやりとする薄い唇に自分の唇を重ね合わせた。
自分からしたのはいいけど、何だがとても恥ずかしくなって
逃げるように元来た道を戻って、
隠れるように布団の中へ勢いよく突っ込んだ私。
同室にいたゆかにごみを見るような眼差しで見られていたのは知らぬが仏。
そうして眠りについて、最終日を迎えるのであった。