第36章 願掛けて願いよ届け時透無一郎☆
「待って…逃げないで」
ほら来た。
何かを…答えを…言うつもり。
その言葉を聞きたくなくて、私はとびっきりの笑顔で無一郎君に振り向いた。
せっかくの修学旅行を、たった一度の失敗で台無しにしたくない。
嫌な気持ち、悲しい気持ちが混ざりあった複雑な感情で残った最後の時間の修学旅行を悲しい思い出にしたくない。
『あはは~…び、びっくりしたよね?好きは本当だよ、でも友達になりたいな…って』
無一郎君を見るけれど、その表情から感情が読み取れなくて。
浅葱色の瞳はしっかりとこちらを見据えていた。
とても綺麗な瞳に吸い込まれてしまいそうだった。
「ねぇ、自分の気持ちを誤魔化さないで……僕は好きだよ、君のこと」
『へ…へぇ?』
「…今みたいに変顔も、いつも明るくて元気なとこも僕は君の全てが好き」
君はそれでも誤魔化そうとするの?と眉根を下げて言うもんだから、こんな表情をするのはずるい。
あざとく見せる無一郎君に気が動転して大きな声で私も無一郎君が好きと発声すれば、周りにいた同級生が一斉にばっとこちらを振り返った。
『あっ……えっと…』
「なら、僕とこれで恋人同士だね」
周囲の人達に言うようににこりと笑いかければ、私の手を繋いですたすたと歩を進める。