第35章 疑惑 時透○一郎
私の肩に触れて、あの時の出来事を私に話す無一郎。
その表情は、悪戯が成功した子供のように笑っていてとても不気味だった。
喧嘩の内容は、ただの私の我が儘。
朝食は絶対ご飯派な私は、食卓に並べられたパンを見て、有一郎に怒ったのが事のきっかけ。
『信じられない!朝食はご飯でしょ!』
<仕方ないだろ…ご飯炊き忘れちゃったんだから>
『今週は有一郎が炊事担当なんだからしっかりしてよね!』
それから、口喧嘩は更にヒートアップして、彼に大嫌いと伝えたのは私。
そしたら、彼はいつも悪かったと謝ってくれていたから。
けれども、今回は違っていて。
彼の口から別れるって言葉が出て
とても悲しくて、家を飛び出したのが真相。
いつも彼の不器用な優しさに甘えて、困らせていた。
朝食後は、大好きなホットミルクを入れてくれる。
とても甘いのが好きな私の事を心配して、いつも砂糖は控えに入れて貰ってたっけ。
物足りなさはあったけど、それでも有一郎が入れてくれたホットミルクはとても美味しかった