第35章 疑惑 時透○一郎
そうだ、思い出した。
私は、無一郎さん…いや、無一郎とはただの幼馴染で、恋人の弟だった。
私が好きなのは、付き合っていたのはその兄の有一郎だ。
なんで、忘れていたんだろう…
あの日、些細な事で喧嘩して
部屋を飛び出した私は、よく見ずに道路に飛び出したんだ。
見通しがいいからって、ここの道路はは速度制限を守らない人達がいるのに。
そんな私を庇って有一郎は車に轢かれて…。
劈くような車輪の音と、ドンとぶつかる大きな音。
有一郎に突き飛ばされ壁にぶつかった私は、
痛む体を我慢して恐る恐る後ろを振り向いたんだ。
<…だい…じょう…ぶ…か…?>
そしたら、真っ赤に染まった有一郎が自分の事を気にせず、心配そうに私を見ていた。
最期に聞いたのは、ごめんなと謝罪の一言。
有一郎は何も悪くない。私が我が儘言ったから…。
全部私のせいなのに…。