第35章 疑惑 時透○一郎
『私も早く無一郎さんの事、思い出したいな…』
その日の夜、案内された部屋で体を休めた。
ふかふかの布団に入って、今日あった出来事を頭の中で整理する。
すべての情報が私にとっては新しく、それでも何も感じないのはまだ何一つ思い出していないから。
新しい情報ではない。
無一郎さんの事も自分の事も
早く思い出したい。
そんなもやもやした気持ちのまま眠りにつく。
カーテンの隙間から差し掛かる朝陽が眩しくて目が覚める。
くらくらする頭で上体を起し、サイドテーブルにある置時計を目にすれば6時の上を時計の針が示す。
「おはよ、良く眠れた?」
優しい声する方へ、顔をあげれば無一郎さんがドアの前でにこりと笑い私に手を振った。
「今日はパンで良かった?」
『…?は、い』
用意された朝食はとても美味しそうだ。
何か手伝うと言ったけれど、もうすぐ終わるから席についててと促される。
『すみません…私寝過ごしたみたいで』
「気にしないで?僕は好きなことをしてるだけだからさ」
無一郎さんが作ってくれた朝食はとても美味しかった。
食後にといつも作ってくれるホットミルクをいれてくれたけど、とても甘くて…美味しかった。