第34章 *スカビオサの花言葉時透無一郎
激しい雷鳴が鳴り響く、
雨は地面を叩きつけるように降り続け、地面にはいくつもの水溜まりを作っていった。
雨が視界を遮り、一層視界を悪くした。
水溜まりの上を、這いつくばって自分の家を目指す。
とても遠く感じる。あれから何時間たったのだろうか。
厚い雷雲は、太陽を隠し一層薄暗くさせた。
身に付けてる衣類も、全部びしょ濡れでそれでも屋敷から抜け出したのは蟲柱様の言葉だった。
蟲柱様が帰った後、すぐには行動を移せなくて何度も何度も考えて悩んだ。
それでも、考えれば可笑しな点がいくつもあって蟲柱様の話が本当だとしたらすぐにでも身を隠さないといけないと、体を無理に動かした。
「どこに行くの…?こんなずぶ濡れになって」
『っ?!…か、霞柱…様…』
「あーあ…衣類も全て泥水で汚くして…どうしてかな?」
静かに話す霞柱様から異様な空気が孕んでるような気がした。
優しく聞いてるのに、何故だかとても怖くて唇が震える。
『い、家に帰りたくて…』
「家…?こんな日に?まだ、怪我も治ってないのに?どうして?」
矢継ぎ早に質問してくる霞柱様が、にこりと笑い、その場でしゃがみこんでゆっくりと顔を近づけた。
「……もしかして、誰かから何か吹き込まれた?」
『…ひっ…』
「教えてほしいな…どんなこと、聞いたの?」
薄く笑う霞柱様が優しく私の頬に触れる。それはとても優しく壊れ物を触るような手つきなのに、芯が冷えるような冷たさだった。