第34章 *スカビオサの花言葉時透無一郎
『……ぅ…』
痛みを感じ、意識が浮上する。
重たい目蓋を開ければ、優しい日差しが、酷く眩しく感じた。
視線だけを動かすと、木目の天上と、広い和室、ふかふかの白い布団に自分が横になっているのがわかった。
上体を起こそうと、体に力をいれるも少しも動かない。
視線を横に動かせば、薬やコップが置かれていて
きっと痛みがないのは、薬が効いてるからだろうと理解する。
誰かが、自分を助けてくれたのだろうか。最後に見たのは刀だった気がする…なら、同じ鬼殺隊士だろうか?
思考をぐるぐると巡らせていると、襖がかたりと音をたてて開き
誰かが入ってくるのを知らせた。
「目が覚めたみたいだね」
『あ、貴方は…霞柱様』
「君、後少し遅かったら死んでたよ?」
そう言って、にこりと微笑んだのは
鬼殺隊の中でも位が高いとされる
霞柱の時透無一郎だ。
刀鍛冶の里が、鬼に奇襲を受けて以来霞柱は変わったと噂されていた。実際、会うのは初めてだが柱の容姿は、周りから聞いており
その長い髪と、若くして柱になったとその特徴からすぐにこの人だと悟った。
『助けてくださりっづ…』
「あぁ、無理に挨拶しなくていいよ…胡蝶さんから聞くと、肋骨が4本と足の健も切れてるみたいで
もう二度と前のようには動けないって」
『っ?!……そ、そうですか…』
霞柱様から出た言葉に衝撃を受ける。
自分はもう鬼殺隊として、鬼を滅する事が出来なくなってしまった。ましてや、足をやってしまったのなら隠になることも不可能。
静かに告げられた言葉は、とても重くのし掛かり、私の心を冷やしていった。
「暫くは安静にしてね、ここの屋敷は好きに使って構わないから」
『で、ですが!』
「これ、柱である僕からの命令」
そう言われてしまえば、開けた唇にぎゅっと結んだ。