第31章 *雁字搦めの蜘蛛の糸(時透無一郎)
有一郎君の家まで数分で到着した。
学校から近い距離にある彼の家は洋風な造りのお洒落な外観をした家だった。
中に入れば広い玄関が顔を出す。
廊下からリビングまでは長めの青いカーペットが敷かれていて天井を見上げればステンドグラスの照明がほんわりと優しく照らす。
外階段を上がって右が俺の部屋。
そこで待っててと言われ、木材で作られた外階段を1歩ずつ上り右にあるドアの前に立つ。
『ここが…有一郎君のお部屋…』
緊張と期待で手汗が滲み出るようだ。
ドアノブを捻れば、寒色系で纏められた小綺麗なお部屋が顔を除かした。
『なんか…意外』
有一郎君のイメージした部屋とは少し違っていた。
必要最低限の物しか置かないイメージ。
でも私が見た実際の部屋は、キャラクターのぬいぐるみや置物とか
白の布団カバーもとても彼には合わないなと思ってしまった。
「待たせたなお茶で良かったか?」
『あ…うん、ありがとう』
お盆にコップを乗せた有一郎君が私の後ろに立つ。
振り替えれば、有一郎君が不思議そうにこちらを見ていて
先程の違和感はきっと気のせいだと思い、彼から飲み物を貰った。
「それで、ここが…こうで」
『あ、本当だ…気づかなかった』
暫く談笑を続けた私達は、話題が今日の授業の話となりその流れで宿題を一緒にやることになった。
有一郎君の説明はとても解りやすく、授業で躓いた難問もすらすらと答えが出てきて苦手だった科目もこれなら克服できそう。
「なぁ…昔のことって覚えてるか?」
『昔の事?』
私に勉強を教えていた有一郎君は、先程までの表情を一変しどこか懐かしむような眼差しでこちらを見据えていた。
有一郎君に言われ、疲れた脳を一旦ストップし昔の自分を考えてみる。
「昔、大切な人を置いていった記憶があるんだよ」
『っ?!』
有一郎君は悲しそうな表情を私に見せた。悲哀に満ちた表情のはずなのに、背すじが凍るのは何故だろう。
「一緒にいると誓ったのに、先に死んじゃって…辛い思いをさせて謝りたかった」
『ね、ねぇ有一郎君…その先……は聞きたくない』
にこりと笑う有一郎君にその続きを聞きたくなくて、彼の話を遮る。
どうして?と首を傾げる彼。
前までなら、新しい彼の表情を知れて嬉しく思うだろ。