第31章 *雁字搦めの蜘蛛の糸(時透無一郎)
でも、別の彼ならどうだ?
先程まで感じる違和感。部屋の配置。
つらつらと語る彼に先程から感じるのは拒否反応にも似た何か。
震える唇に身がぶるぶると震え出す。それはもう片方の弟に感じた反応で……
「まだ気づかない?… 昔っからの付き合いなのに、騙されちゃ駄目でしょ?」
そう、彼は双子だ。
気づかなかった。無一郎君だということに。
「僕はずっと探していたんだよ?やっと見つけたのに、可笑しいな……兄さんの事好きになっちゃ駄目だよ?」
『っ…いや、離して!!』
不気味なほどにっこりと笑って近づく彼に、連動するようにじりじりと後退する。
ゆっくりと私の後を追うように近づく彼が、突然目にも止まらぬ早さで私を押し倒しては、冷たいフローリングの上に叩きつける痛みが私を襲う。
恐怖と震えが止まらない。ガタガタと震えだす私に無一郎は懐かしいなぁと目尻を下げて壊れ物を扱うように私の頬をねっとりと撫で上げる。
『ひぃっ!!』
「覚えてる?僕…が好きで一緒に暮らしたんだけど、僕その後殉職しちゃって…も僕の後を追うように死んじゃったんだよね?」
私を押し倒してその上に馬乗りになる彼は至極面白そうに口角を上げ、頬を撫でていた手は制服のボタンへと伸びていった。
1つ1つボタンを外す彼と、誰かが重なって見える。
薄暗い部屋で……今のように押し倒して……
『う、嘘だ……っ』
「?…?」
『わ、私を監禁して、無理矢理自分のものにして…』
フラッシュバックするようにチカチカと視界が点滅するよう。脳裏に焼き付いた遠い昔の記憶が呼び覚ます。