第31章 *雁字搦めの蜘蛛の糸(時透無一郎)
今日一緒に帰らないか
通知音に携帯を開けば、簡素なメールが届いていた。
宛先を確認すれば有一郎君からだった。
すぐに一緒に帰ると返信し携帯を制服のポケットにしまう、私の内心はドキドキと鼓動が高鳴って今にも破裂しそうな程。
異性と帰るのは初めてでただ、一緒に帰宅するだけだと言うのに変に期待してしまう。
午後の授業なんてあっという間で、待ち合わせ場所に指定された下駄箱へと向かう。
少し遅れて有一郎君がくると二人並んで、学校を後にした。
『…それでね…有一郎君』
「…なぁ…今から俺ん家来ないか?」
今日あった出来事とか、本の話とか色んな話をしていると私の話を遮るかのように有一郎君が口を開く。
「この前借りたがっていた本、取りに来いよ」
『え、いいの?!』
前に有一郎君の家にある本を借りたいと話していたこと覚えていてくれたと思うと、とても嬉しかった。
はにかむように笑う有一郎君。
眉根を下げて笑う有一郎君に
初めて見たような気がした。