第31章 *雁字搦めの蜘蛛の糸(時透無一郎)
『はぁっ…はぁっ』
図書室に着いて両膝に両手を添え、息を整える。
途中、冨岡先生に注意されるも
それを振り切り全速力で走ってしまった。
『…はぁっ…後で職員室行きかな』
それでも、早く離れてしまいたかった。
時透無一郎から。少しの距離も近くにいたくないのはどうしてだろうか。
前までそんなことなかったはずなのに。
意識した途端、彼の全てに体が拒絶反応にも似た何かが感情を支配する。
図書室の中に入ると空調が管理された中はとても心地よく、体温が上昇した体にはちょうど良かった。
借りた本を受付で返却し新たに本を借りようと小説コーナーへ足を運ぶ。
本棚の列は二人並んで入るには少し狭い間隔で、通る度にお互いが身を捩って歩く。
『…っ』
3列目の本棚の奥。
先客がいた。時透君だ。通るか通らないか悩んで、結局本の誘惑に負けた私はゆっくりと彼に近づく。
すみませんと小さく声をかけ、狭い通りを身を捩って進んで目当ての本を見つける。
手に取ろうと手を伸ばすと向こうもこの本が目当てだったのだろう、偶然手が重なってしまった。