第31章 *雁字搦めの蜘蛛の糸(時透無一郎)
なんだ、只の気まぐれか。
それもそうだと一人納得していた。
こんな地味で冴えない自分なんかに興味を抱くはずがない。
髪の毛はいつもセットしてないし化粧だってしたことがない、度が強い丸渕眼鏡をかけている。
お洒落には興味なんてないので、
ここの女子からかなり浮いてる存在である。
それでもいいと思っていた。
元々群がるのは好きじゃないし、一人が好きなのに。
今だってそう。時透君と話してるだけで、女子からの視線がびしびしとこちらへ向けられていた。
早く離れてほしい。本に興味がないのならどっかへ行ってとさえ思う。
気まずい沈黙が続く。
これ以上何もないなら、私を一人にさせてと不満が積もる。
ピリピリとした女子からの殺気も嫌だし、そもそも私は時透無一郎が苦手なのだから。
何を考えてるのかわからない。
一緒にいるだけで、心臓がぎゅっと握りつぶされるような感覚さえもする。
「無一郎君、#NAME2#さんなんてほっといて私とお話しよー?
」
甘ったるい猫撫声で、時透君の腕に自身の腕を絡めて誘うのは
このクラスで一番可愛い撫子さん。
撫子さんは私をキッと睨むと、時透君の腕を引っ張るも時透君はその場から動くことはせず
まるで彼女を認識してないように私の事をじっと見つめていた。