第31章 *雁字搦めの蜘蛛の糸(時透無一郎)
「何の本を読んでるの?」
休み時間、一人静かに本の世界を楽しんでる私に頭上から小さな声が落ちてきた。
すると先程までがやがと騒がしかった教室がしんと静かに静まり、ここにいる全員の視線がこちらへと向けられていた。
それもそのはず。中等部で女子に飛び抜けて人気が高く将棋部ではテレビに出るほどの実力者。
双子の片割れ、時透無一郎が話しかけてきたからだ。
そんな思いもしない彼から話しかけられて
狼狽えるに一瞥すると
本の表紙をチラ見して、空いてる前の席へと腰を掛けた。
もちろん、彼の席はの席から離れている。
普段、人に無関心の彼がどうして
自分なんかに話かけてきたのか。
只の気まぐれ。はたまた本に興味があるのか…
深い意味はないと思考を巡らせ
辿々しく何の本か教えると
さほど興味が無さそうに返事が返ってきた。