第30章 奇跡と恋と最期の願い時透有一郎
「貴女と私が入れ替わったのは、あの湖が原因
あの湖はね、共鳴した想いが不思議な現象を起こすの」
『共鳴した想い…』
「私は貴女になりたいと思っていた…元気で優しくて…ずっと明るい貴女に元気を貰ってたの」
そう話す彼女はどこか儚く今にも消えそうに見えた。
あの湖は共鳴した想いで不思議な出来事が起きると彼女は言った。
それは私が彼女になりたいと
彼女もまた私になりたいと願ったからだ。
でもそれだけじゃないと彼女は続けた。
「とても、楽しかった…健康な貴女は走ることも、体を動かしても平気だったから…あの湖は波長があったときどちらか一方が亡くなれば入れ替われる…そうとも言われてるわ」
『…え、て言うことは…その…』
彼女は悲しそうに笑って、頷き
私を抱き締めた。
「今までありがとう…有一郎をよろしくね」
するとその言葉を最後に、意識が徐々に薄れていく。
私の姿をした彼女はとても悲しそうに笑うから、私は彼女に言いたかった事を伝えたいと思って口を開こうとするけれど、重たい口は開けることができなかった。