第30章 奇跡と恋と最期の願い時透有一郎
「私、貴女になりたいとずっと思っていた、貴女は有一郎のこと好きなんでしょ?」
『っへぇ?!…あ、っはい……あ…ええっと…その…』
図星をつかれて戸惑う私にくすりと彼女が笑えば、誤魔化さないでとこちらを振り向いた。
「大丈夫、有一郎も貴方の事が大好きだもの」
『へっ?!そんな事ないです!!だって時透君はいつも貴女の事を考えて、大事に思っていて…それに…それにっ』
「そう…彼は過保護なの…それと私の彼氏ではないわ」
『へ?…え?えええっえ!?』
私の反応が面白いのか、上品に笑うかれんさん。
色んな情報が入り込んで、頭がショートしそう。
そんな私に彼女は幼子に教えるように優しく語りかけた。
彼女と有一郎君は遠い親戚だと言うこと。
彼女の両親は既に他界し、身寄りがない彼女は親戚の時透家を訪れ、有一郎君とその双子の弟さんと一緒に育ったこと。
「有一郎は本当に優しい子だけど、度が過ぎるのよね…
私といるとき、いつも貴女のお話ばかりで…」
『え、で、でも私…彼に振られて…』
「それはきっと私のせい…私が医者に余命を告げられたから」
彼女は生まれたときから体が弱く、特に心臓が弱いと話してくれた。
そんな彼女を心配していた有一郎君は自分が幸せになってはいけないと思ってそう答えたのかもしれないとかれんさんは困ったように笑う。