第30章 奇跡と恋と最期の願い時透有一郎
両手で顔を覆う。指の隙間から流れ落ちる涙はポタポタと地面を濡らす。
それでも、足は少しずつ学校へと進んでいった。
すれ違う人達が私を見るけれど、本当の私は誰もみやしない。
「っ…かれん!!!」
『とき……有一郎君』
涙を袖で拭いながら歩けば、時透君がこちらへ走ってくるのが見えた。
はぁはぁっ…と息を乱しながらこちらへ向かってくる時透君にまた落ち着いていた涙が出てくる。
「どうしたの…っどこか痛い?」
『…時透君…』
「…かれんっ?」
近づいてきた彼が、不思議そうにこちらを見やる。
そんな彼に抑えていた気持ちがだんだんと溢れ出ていく。嫌われるのわかってる。
けれど、伝えずにはいられなかった。
『…ごめんなさい…私っかれんさんじゃないっ…私…貴方に相応しい女の子になりたくて…でもこんなことになるとは思わなくてっ!…終わったらすぐに消えるから…だからっ全てが終わったら許してほしい…』
そう言って、逃げるように学校へ向かう私を彼は追ってはこなかった。
きっと、怒りを通り越して呆れたのだろう。
学校に向かえば何かはわかると。
そう本能が告げる。