第30章 奇跡と恋と最期の願い時透有一郎
私と時透君は何の接点もない。一方通行片想い。
好きって気持ちは募るばかりで、抑える事ができない。
器に入った好きはいつしか溢れて行き場を失う。
私にとって彼は只のクラスメイト。
彼にとってかれんさんは大事な人。
そんなことわかってる。でも願った日もあった。
『私がかれんさんになれれば良いのにって』
でも本当になりたかったわけじゃない。
彼に見てもらいたかっただけ。
『…私がいるわけないか』
湖は深いから覗いて見えるわけでもないんだけど。
次に何をするべきか、私は知っている。
それなのに、ここを選んだのは向かいたくなかったからだ。
もし、私が居たらその中にはかれんさんがいる。
私が居たらかれんさんはどんな気持ちなんだろう。
戸惑い、悲しみ、憎しみ、怒り?
きっと私のすがたをしたかれんさんの今の姿じゃ時透君と今まで通りに話せない、見てもらえない…触れられないからだ。
『でも、逃げるわけには行かないか…』
重い足に渇をいれ、来た道をとぼとぼと歩く。
途中、携帯がなりディスプレイをみれば時透君だった。
慌てて通話ボタンを押せば、ほらね、慌ただしい声。
『(彼は本当にかれんさんが好き…)…もしもし』
「かれん?!…今病院から電話があったけど…今何処なんだ?!俺が迎えに行くから!」
『…心配かけて、ごめんね…今学校に向かってるよ』
「駄目だ!!…一人じゃ危ないから!俺が早退してかれんのそばに…『駄目!!お願い…今は一人にさせて』
一方的に通話を切った。
私はかれんさんにならないと。このままじゃ二人の関係が悪くなってしまう…。
そんなことはわかってるけど、
彼の口から聞きたくない言葉。
とても心配していた。それは当たり前。
『私も…っ…時透君にどうすれば好いてもらえる…のっ』
貴方に相応しい人になるため頑張って自分を磨いた。
化粧を覚え、女性らしく振舞い、笑顔は常に忘れずに…
なのに…なのにっ…どれだけ努力しても…私はあの子には…っ…追い付かないっ…
かれんさんにはなれない。