第30章 奇跡と恋と最期の願い時透有一郎
久しぶりの眩しい光に目が眩む。
外の空気に噎せるけれど、何とか足を動かしてあの場所に向かってみた。
かれんさんが体育や運動で体を動かす授業をしていたのを見たことがなかった。
運動になれないこの体は緩やかな坂道でも厳しいみたいで、1歩進む毎に息もそれにあわせ乱れていった。
『…っはぁ…っはぁ…いつもは
もうとっくに着いてるはずなのにっ…』
深呼吸をして酸素を体に取り入れる。
鳥居を潜り抜ければ、また緩やかな坂道がある。
そしてその奥にある林の奥。
そこにある小さな湖まであとどのくらいだろう。
小休憩をとった私は、また一歩ずつ足を動かしてあの場所まで向かった。
『つ、ついた…長かった…』
私の体では15分もかからないはずなのに、かれんさんの体では1時間も時間が掛かってしまった。
林の奥にあるひっそりとした湖。
小さな湖だけれど、そこが深いのも有名で、林の前に注意看板やテープが貼られている。
それを気にせず、奥へ入ってこの湖に身を投げた。
『ここを選んだのは、ここが私と同じ想いが叶わず身を投げたお姫様がいたから…』
そう、この神社は縁結びの神様が奉られている。
何故縁結びだと伝えられるのは、亡くなったお姫様とお殿様が本当は相思相愛だったから。
それを憐れに思った神主が奉ったのが始まりと言われている。
『まぁ…そこは違うんだけど…』